Guest Profile
朝田 篤(あさだ・あつし)
1966年大阪府生まれ。90年いすゞ自動車入社。98年webシステム会社設立。2000年クレジット決済代行システム会社設立。14年コムソル株式会社設立。15年代表に就任。
特集専門知識、専任担当者も不要 〝社内から〞のセキュリティ脅威に備える
1.社員のPCの作業データを クラウド経由で把握する
インターネットが普及して便利になった半面、サイバー犯罪も多発するようになり、大きな社会問題となっている。ビジネスシーンでも、ネットを介した顧客情報の流失、ネット上での信用毀損といったリスクが高まっている。そこで、情報セキュリティを強化する企業が急増しているが、サイバー攻撃やウイルスといった〝外部の脅威〞しか想定していないケースが大半だ。「本当に怖いのは内なる敵。社員による企業秘密の漏えいといった脅威には、手を打っていない企業も少なくありません」と、情報セキュリティサービスが主力のコムソル社長の朝田篤は説明する。
朝田は、クレジット会社系システム会社で決済業務に約12年携わった。情報セキュリティの重要性を痛感し、在職中から温めていた新サービスのアイデアを具体化するため、2014年にコムソルを起業した。「サイバー犯罪に走る社員といっても、実は、普段はまじめに働いている社員がほとんど。例えば、ちょっとお金に困ったとき、高値で売れると聞いて、顧客名簿を持ち出してし
まう。横領や背任とは違って、罪の意識をあまり感じないからです。また、家で残業をするために、社内データをコピーして持ち帰る人は多いですよね。イントラネット上での作業が面倒なので、セキュリティポリシーに違反して、イントラ外でデータ処理していることもよくあります。本人は仕事を頑張っているつもりですが、それが仇になって、企業秘密が外部に持ち出されてしまうことがあるわけです」(朝田社長)
そこで、同社が15年11月から販売している社内情報監視システムが「LOOOC(ルック)」だ。簡単にいえば、会社のPCの作業データを逐一、クラウドに送信し、社員がいつ、どんな操作をしたのかを把握できるシステムだ。
2.上場企業信頼のシステムを 中小でも手軽に導入できる
「キャプチャーでPC画面を録画し、どのソフトを使ってどんな文字を打ち込んだのか、ネットでどのサイトにアクセスしたのか、さらにメールの履歴やUSB操作ログまで把握でき、いわば、そのPCで何をしていたのかが、手に取るようにわかります」
不正行為を突き止めるだけでなく、問題が起こった場合、その原因も究明できる。社内情報のチェック体制は万全で、例えば、オフラインで作業したデータであっても、オンライン接続した途端、まとめて吸い上げる。クラウド上のデータ保管庫も厳重に秘匿し、単純な保管は行なっていないため、保管データには最大限の気を遣っている。
日本でも情報セキュリティサービスが広まりつつあるが、そうした中で、ルックの最大のポイントは、格安で利用できるという点。年間利用料金は社員1人分につき1万8000円。しかも、データ保管料込みだ。ルックで保管するデータ量は膨大で、1日100メガバイト程度のキャパシティが必要になるが、通常、それを保管するだけでも、2万円は楽にかかる。ルックではクラウドを活用しているので、低料金を実現できるのだ。また、セキュリティ機能を必要最小限に抑えていることも安さの理由だ。データの保管期間は原則3ヵ月だが、オプションで追加料金を支払えば、期間を延長できる。
「情報セキュリティシステムは、一般にコストが高く、社員が100人以上いるような企業でないと導入が難しいのですが、ルックなら、中小企業でも手軽に導入できる」
さらに、情報セキュリティの専門知識も不要。CSO(最高情報管理責任者)や情報管理の専任スタッフが社内にいなくても、利用可能だ。導入のサポートはもちろん、保守サービスも同社が行なう。一般的なスペックのPCなら対応でき、導入は3営業日ほどから可能だ。
現在、ルックを採用しているのは約100社。半数は上場企業で、中には、セキュリティ関連企業も含まれており、同社のシステムに対する信頼性が高いことを物語っている。「情報漏えい系のニュースが飛び交うと、弊社HPからの問い合わせが一気に増えます。それだけ社会からの関心が高いということであり、本格的な検討に入る企業が多くなっています」
3.ワークフローのムダ発見 業務効率改善のメリットも
実は、ルックの導入効果は社内情報の監視に止まらない。ある企業が作業データを検証したところ、スカイプを使った会議が長すぎることがわかり、不要な会議の削減につながったという。また、ソフトウェア開発会社が、プログラミングのどこでミスが発生したのかを早期に発見でき、開発スピードを早めることに役立ったとか、全社員の作業ログから現状のワークフローのムダがわか
り、見直しに発展したということもある。
「お客様には、PC作業が監視されていることを社内に周知するようにお勧めしている。そうすると、社員が緊張して、仕事中にゲームやネットサーフィンをしなくなり、作業効率が高まるそうです」
同社では今後、売上げの約7割を占めるルックの拡販に力を入れていく。
「不正行為を事後にチェックするだけでなく、事前に防止する手立ても考えています。例えば、サイバー犯罪を企てている社員は、本番前に〝予行演習〞をするケースが多い。そうした予兆を察知し、お客様に警告するシステムも開発中です」
現在、50〜70社がルックの導入を準備中、もしくは検討中で、9人いるスタッフはフル稼働状態だという。「私も営業で全国を飛び回らないといけません」と、朝田は嬉しい悲鳴を上げている。